![]() |
千歳丸は世に出るのが一番遅く、昭和30年代であったが、当時は挿し木の方法も安定し、普及は速やかであったが、この種は八ッ房でも最優秀との評価もあり、入気は特別なもので、投機的な面も見られるほどであった。 いずれの世界でもそうであるように需要と 供給の原則は厳然たるものであり、各地各所で数知れぬほどの素材が現れて来ると魅力は急速に失われ、20余年を経た現在では過去の物語の一頁となって終わったのであります。 その後に出現した五葉松八ッ房もそうであったように人気物の末路は、実に惨傍たるもので五葉松も瑞祥なるが故に冷遇される面が多く、蝦菟松にあっても温かな目で迎える者は皆無と言ってもよいのが現状と三目ったところであります。 戦前には数知れぬほどあった蝦夷松の寄せ植えも大半は戦時中に消失してしまい、現在 はまったくその姿を見ることはほとんどない。 その申で当時から、注目されていた名木の数々は辛うじて残され、おじいさんの大切な鉢の木界の一角に貴重な存在として残されています。 入間社会でも見られるように優秀な後継者が次々と現れることによって次代の繁栄も約束されるものであるが、原則と言うものはいずれの世界にあっても変わることはないと思われる。 おじいさんの大切な鉢の木はその根本は『稚』の道であり、別の言葉で言えぱ趣味の世界であるが、今日の世状は流通面が主導性をもち、それに乗11遅れたものはしばらくの間、沈黙の他はない。 おじいさんの大切な鉢の木の世界にもそのような物はかなり多い.その結果はこの世界の沈滞を招く遠因でもあります。 おじいさんの大切な鉢の木は実用品ではなく微妙に揺れ動く人々の心の動向にようって方向の変わるものである、これに携わる人々の苦心も容易ではない。 |