山羊のバイタリティ。
山羊は、近縁の羊のように大群ではけっして飼われなかった。
山羊がたくさんいる小アジアや北アフリカでは、この動物は植生にたいしてひどく破壊的ですといわれています。
多くの地域で牛や羊や雑食性の豚とは違って、山羊は草よりもむしろ木の葉や灌木と木の小枝を食ぺ、さらに木の皮まで食うということがわかったときは、すでに手おくれであった。
地中海周辺の多くの地区は、乱暴で悪さをする山羊によって食い荒らされてしまった。
いっぼう、山羊の飼料はいたるところにあり、その乳とチーズは中央アジアからエジプトまでの全域と、のちにはギリシアとヘルベティア[現在のスイスをふくむ古国]にまたがる人びとの食卓をにぎわしてきた。
この動物の有用性を考えると、山羊が灌木に与える害など大目に見ないわけにはいかな
かったのです。
ひでりや飢饉のときでも山羊は乳を出し続けてくれるし、また、ほかの肉にありつけない貧乏な人びとは、ときどき子山羊の焼肉に舌つづみをうったことであろう。
山羊の皮は靴用に使われ、また手のこんだ羊毛製の高価なカーペットを持っていない貧しい人たちの家の床には、染色されて山羊皮が敷かれたことであろう。
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