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としよりのひとり言。 ここに一本のネズミサシがある。 ほとんど手入れされていないが、何となく"面白い木になりそうだ"という感じがある。 出会いである。 回転台にのせ、あれこれと検討してみる。 手が動き、時に休む。 ひとところに静止する時間が長くなり、再び回転台が大きく廻って、ほぼ反対側でまた、静止する。 やがて、大きな意志の力で回転台は強く廻り、再び元の位置に戻る。 固定されたかのように、微動だにしない。 眼が輝やき、笑顔すらこぼれる。 正面は決定した。 この瞬間から、おそらくこの種木がもっていたであろう諸々の可能性は、たった一つに凝縮する。 いや、潜在的でしかなかった可能性が、明確なかたちとなって表われたのである。 それは、我が家の鉢植えとしての可能性に他ならない。 一本のネズミサシは、一つの強い意志の力で支配された。 そして、その意志の中で、さらに新しい生命を得る。 限りない時空のうねりの彼方へと、大きな翼を拡げ、いまにも飛び立とうとするかのような気配を漲らせる。 ……手が、動きはじめた。 |